前回の記事では、日本を離れてタイで暮らす際に重要となる、日本の「非居住者」とタイの「居住者」という税務上の立場の違いについてお話ししました。
タイに年間183日以上滞在すると、タイの税法上「居住者」として扱われる可能性が高い、という点をご理解いただけたかと思います。
では、居住者になることで具体的にどんなメリットがあり、どんな手続きが必要になるのでしょうか?
特別な「居住者になるための申請」はありませんが、知っておくべき関連手続きや、それによって得られるメリットは確かに存在します。
この記事では、タイ居住者の具体的なメリットと、特に重要な納税者番号(TIN)取得などの関連手続きについて、分かりやすく解説します。
タイの税法上の「居住者」とは?

「183日ルール」がカギ | 暦年(1月1日から12月31日まで)の間に、タイ国内にいた日数の合計が183日以上になると、タイの税法上「居住者」とみなされるのが基本ルールです。 |
滞在日数により「居住者としてみなされる」 | これは、自分で申請して「居住者になる」というよりも、タイでの滞在日数という客観的な事実に基づいて、「居住者として扱われる」というものです。 |
居住者とみなされた場合の対応 | 居住者とみなされた場合、タイの税金のルールに従う必要が出てきます。そして、それに関連する手続きも必要になってくる、という流れです。 |
タイ居住者になったら?関連する主な「手続き」を知っておこう
「居住者になるための申請」はありませんが、居住者としてタイで生活していく上で、やっておくべきこと、やっておくと便利な手続きがあります。
1. 納税者番号(Tax ID)の取得

なぜ必要か? | タイで収入を得た場合、税金を納める必要があります。この納税者番号がなければ、税務手続きができません。銀行での口座開設や投資、不動産購入の場面でも、この番号が必要になることがあります。 |
取得できる場所 | お住まいのエリアを管轄する歳入局(Revenue Department)で申請します。 |
必要なもの | パスポート、有効なビザ、現住所を証明する書類(例:賃貸契約書)など。 |
2. 居住証明書(Certificate of Residence)

居住証明書は、必要な時だけ取得すれば問題ありません。例えば、日本との間で二重課税を避けたい時や、タイでの運転免許証取得、銀行手続きなどで使うことがあります。
発行できる場所 | 移民局または歳入局で申請可能です。 |
必要書類 | パスポート、ビザ、TM.30、写真など。申請先や用途により異なるため、事前に要確認です。 |
3. 銀行口座の開設など

非居住者でも口座を持てる銀行はありますが、居住者であることで、選べる口座の種類が増えたり、クレジットカードやローンが組みやすくなったりする傾向があります。
タイ居住者になるメリット

タイの居住者になると、納税などの義務も出てきますが、特に資産をお持ちの方にはメリットも少なくありません。
所得税 | タイの所得税率は、日本の最高税率より低めに設定されています。なので、タイでの収入が多い方にとっては、税金の負担が軽くなる可能性があります。 |
海外での収入 | タイ国外で得た収入は、タイに持ち込まなければ、原則としてタイでの課税対象にはなりません。ただし、2024年から持ち込みに関するルールが新しくなり複雑化しています。この点は専門家への確認が必須です。 |
相続・贈与税 | 日本と比べると、タイの相続税や贈与税は基礎控除額が大きく、税率も低い傾向にあります。 |
投資の利益 | タイ証券取引所の上場株にかかる売却益は、条件付きで非課税になることも。 |
※税金の話は本当に複雑で、ルールも変わりやすいです。ここに書いたのは一般的な話なので、必ず専門家にご自身の状況を相談してくださいね。
居住者の責任も忘れずに

メリット享受のためには、タイの法律を守り、納税義務をしっかり果たすことが大前提です。期限内に正しい申告・納税を行うことが、トラブル回避の鍵となります。
まとめ:タイ生活をより良くするために
タイ居住者になるのに特別な申請は不要で、滞在日数で決まります。メリットも多く、特に資産を持つ方には魅力的です。
ただし、税務や法務は複雑で変化も多いため、自己判断せず、早めに専門家へ相談することを強くおすすめします。